飼い主がベストと思う選択を!
避妊手術を受けさせるか否かには、いろいろな考え方があり、どうするのがベストとは一概に言えません。最近では、世界的にも意見が異なってきています。犬自身は、自分の意見が言えないので、飼い主の方がベストだと思われる決断を下すしか方法はありません。以下に、避妊手術をしなかった場合に起こる可能性がある病気について記載しておきます。検討する際の参考になさってください。
1.子宮内膜炎
避妊手術を受けさせない場合、かかる可能性のある病気には、まず子宮内膜炎(子宮蓄膿症・子宮水腫)があります。これらは、子宮内に膿や粘液がたまる病気で、不妊手術をしていない成犬の発情後期や、発情と発情の間に起きやすいという傾向があります。とくに、一度も子供を産ませたことのない高齢犬に多く、年齢が上がるにつれ、その発生率は増加します。8歳以上で避妊手術を受けていない犬では、発生率が15〜50%という説があります(かなり幅がありますが)。この病気の症状は、膿や粘液、おりものの排出、元気消失、微熱、食欲不振、多飲多尿、腹部拡張など。気づかずにいると、貧血や腎不全を併発し、高齢ですでに心不全を起こしている場合には、手術が危険でむずかしいことがあります。
2.乳腺腫瘍
乳腺腫瘍の発生には、女性ホルモンの関与が以前から指摘されており、避妊手術と乳腺腫瘍の関係は、さまざまな本に記載されています。
初回発情以前に避妊手術を受けた場合と、避妊手術を受けない場合の乳腺腫瘍の発生率は、後者の方が10倍高いことが報告されています。また、4回以上の発情を経験していると、その後に避妊手術を受けても、乳腺腫瘍の発生率は変わらないとも言われています。
乳腺腫瘍の好発年齢は8歳以上ですが、若い犬にも見られます。乳腺腫瘍は、その大きさと病理学的な考え方から、悪性と良性が半々と言われています。治療は、基本的には外科手術で乳腺の切除を行いますが、大きさや程度によって、方法は異なります。しこりだけでなく、乳腺全体が熱を持って、板状に腫れているときは、とても危険で、予後が悪い炎症性乳癌であることがあります。この場合には、治療の施しようがありません。このほか、乳腺が全体的に腫れていて、分泌物がある場合には、卵巣の腫瘍や嚢腫を持っていることもありますので、卵巣子宮摘出を一緒に行う必要がある場合もあります。乳腺腫瘍は良性であっても、放置すると、高カルシウム血症を起こすこともあります。
3.その他の病気
卵巣や子宮の腫瘍は、犬では比較的少ないですが、卵巣の腫瘍では、卵胞嚢腫や顆粒膜細胞腫、子宮では平滑筋腫の報告があります。高齢になるほど発生率は増加しますが、2〜3歳でも報告があります。症状は、避妊手術や開腹手術で発見されるような無症状のものから、発情が不規則になったり、発情が止まらなくなったり、子宮内膜炎を併発するものまで、さまざまなケースがあります。腫瘍が大きくなれば、周囲組織を圧迫し、食欲不振や嘔吐、あるいは排便・排尿障害を起こすこともあります。発情後の乳腺の腫れがひどく、毎回、乳腺炎を起こして熱を持つとすれば、早く避妊手術をしてあげた方が楽になるかもしれません。
以上、避妊手術をしない場合にかかる可能性のある病気について述べました。人間の場合なら、乳癌の発生率が高いからといって、妊娠していない女性が避妊手術を受けることはないでしょう。しかし、老齢犬になってから、病気にかかって、危険な手術を受けさせることになったら、それも飼い主の責任のような気もしますし・・・。
避妊手術を行った後は、太りやすい傾向にあるのは事実ですが、これは食事をコントロールすれば防ぐことができるレベルのものです。ただ、そんなことより何より、避妊手術を行うのは、自然ではないと抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。いろんな考え方があって、しかるべきだと私自身も思います。あとは飼い主さんが上記のような病気の可能性などを知ったうえで、決断を下すしかないでしょう。私自身は、オス犬は生後8カ月で去勢手術を行いました。メス犬は現在5カ月齢ですので、初回発情前に避妊手術を受けさせようと思っています。
