テリトリー意識が、第一の原因
犬の攻撃行動には、さまざまな原因があります。今回の場合は、第一の原因として、テリトリーの問題が考えられます。犬は本来、群れで暮らし、縄ばり(テリトリー)を持っています。テリトリーは、安心して休める住処と食料確保の狩りの場として、犬にとって、とても重要な領域です。この領域を守ろうとするのが、テリトリー意識です。人間と暮らす犬にとっては、飼い主家族が群れであり、ともに暮らしている家が縄ばりとなります。犬の立場からみると、家を訪れる者をすべて「侵入者」と認識するのも、当然のことかもしれません。このテリトリー意識を利用したのが、「番犬」です。
今回ご相談のシーズーは、大変優秀な番犬ということになります。では、なぜ優秀な番犬になったのでしょうか。kojiさんが推察されているとおり、小さいころから家の中で飼われていて、家族以外の人と接触する機会を与えられなかったことも、要因のひとつと考えられます。犬は本来、子犬の時期にさまざまな経験をすることで、社会性を身につけていきます。この時期に家族以外の人に接する機会が極端に少なかったことで、他人に対して過剰に反応するようになってしまったのでしょう。
自分がリーダーだと思っていることも原因
ただし、今回のご相談の場合には、警戒心の強い犬ということだけではすみません。なぜなら、「人に対する攻撃性」という問題を持っているからです。攻撃というのは、自分自身の権利を主張し、身を守るための行動です。しかも、飼い主がそばにいるにもかかわらず、他人に対して威嚇、攻撃をするということは、自分の身は自分で守っている状態であり、まったく飼い主を頼りにしていません。それどころか、飼い主のことも自分が守っているつもりなのでしょう。
これは、明らかに群れの上位の犬がみせる行動です。家族の誰がそばにいても同様の態度を示すのであれば、自分が家族の中で一番偉いと思っているかもしれません。犬の気に入らないことをしたときに威嚇したり、かもうとしたりということが、家族に対してもみられるのではないでしょうか。このように、「自分をリーダーと思い、群れである家族を守るために、つねに神経を尖らせて生活している犬」と、「飼い主を頼り、一緒にいることで安心し、のんびり暮らしている犬」とでは、日常生活のストレスはずいぶんと異なるはずです。
それでなくても、人間社会で暮らしているかぎり、たとえ、犬が自分をリーダーだと思っていても、思いどおりにいかないこともたくさん出てきます。お客さんに対して、うなったり、かみついたりといった“リーダーであればこそ”の行動に対して、他の部屋に追いやられたり、ひもでつながれたりすることがあるかもしれません。リーダーだと自覚していれば、なお、つらい仕打ちと感じるでしょう。そうして、ますますお客さんのことを、不快な存在としてとらえるようになってしまいます。
飼い主がリーダーになろう
こうした犬に、まず最初にしなくてはならないのは、飼い主に守られて生活していることをきちんと認識させることです。これは、しつけの基本であり、「飼い主がリーダーになる」ということです。大変なことのような気がしますが、毎日の生活の中で、犬に対する態度をちょっと意識するだけでいいのです。以下に、具体的な方法をご紹介します。
1.アイコンタクト
犬の名前を呼び、飼い主に注目させる。飼い主に注目したらほめる。
2.催促に応じない
食事や散歩、遊びの時間は、飼い主が決める。催促されても応じない(催促は犬の命令だから)。
3.飼い主が優先
つねに飼い主が優先。扉を出入りするときは、必ず飼い主が先に。ソファーや椅子に、犬が先にいる場合は、どけて座るようにする。食事も、飼い主が先に口をつけてから、犬に与える。
4.堂々とふるまう
堂々と落ちついた態度で犬に接する。
5.犬と仲よくなる
散歩や遊びなど、犬が喜ぶ楽しいことを、一緒にして、犬と仲よくなる。
6.さわられることに慣らす
やさしく声をかけながら、からだをマッサージし、全身をさわられることに少しずつ慣らす。
7.フセをさせる
飼い主の側で、5分間以上、フセ(服従の姿勢)をさせる。最初は10〜30秒から始め、テレビや読書の時間を利用して、徐々に時間を延長する。
以上、簡単にあげましたが、できることから少しずつ行ってください。愛犬との生活の主導権は、つねに飼い主がとるように意識し、犬の生活に合わせるのではなく、飼い主の都合を犬に受け入れさせるようにします。犬のわがままを通していると、犬は自分の方が優位だと勘違いしてしまいます。犬に尊敬され、信頼されてはじめて、犬からリーダーだと認められるのです。犬が、飼い主に守られていることを自覚するようになれば、「侵入者」だと思って、攻撃をしていたお客さんに対しても、信頼する飼い主が迎え入れたのだから、その判断を信じ、いざとなれば、飼い主が守ってくれるという安心感から、これまでのような過剰な反応をすることは少なくなるでしょう。
